母子像の意味。/三人目は保育料無料?

 カソリックの教会に祈りの対象として母子像が置いてあります。イコンなどにもよく描かれていますが、幼子イエスを抱く聖母マリアの姿です。もともと偶像崇拝を避けていた人たちが、どうして母子像を拝みたくなったのか。戦乱や貧困があたりまえだった時代、人間の本質を疑いたくなるような苦しみや悲しみの出来事のなかで、幼子を抱く母の姿は慈悲の象徴だったのでしょう。日常生活のなかでも目にすることができるその風景に根源的な救いを求めたのではないでしょうか。
 子を抱く母は、人類にとって特別の意味を持つ風景なのです。人はその姿を見ると、過去と未来に温かさを感じ、怖れが遠のくのでしょう。人間は、母子を守ることで心を一つにし、生き甲斐や、幸せを感じ、育ってゆくのです。守る側の心と絆が育ってゆくのです。
 人間が人間性を追い求めるとき、母と子の姿はその意識の起点になっていたのではないかと思います。

 いまの少子化の一番の原因は男たちが結婚しなくなっていることです。
 男は元来、自分のためなんかには頑張れない、誰かのために頑張るのが普通なのでしょう。そういう風につくられたのだと思います。最近、新卒の男子が使いものにならない、女子だったら大丈夫、という声を聴きます。草食系男子が増えている、というのもどうやら現実のようです。フィギアと一緒に旅行に出かける大学生もいるそうです。それ自体は悪いことではない。むしろその方が平和なのではないかとさえ思います。
 しかし、もしこの国が、もうしばらく経済的に先進国の中で優位を保ちたいのなら、もう少し人口を増やしたいのなら、男たちが生きる力を取り戻す方向に施策をもってゆく必要があると思います。
 母と子を引き離しては、多くの男たちは何を起点に生きていいかわからなくなる。
 そういう男女の幸福観の違いを重視する視点で、いまの親子を引き離す施策をもう一度考え直すといいのです。しかし、いまはまだ誰も施策の中でそういう人類学的な幸福論を言いません。昔だったら当たり前だった、陰陽の法則が忘れられているような気がします。
 いずれ、考え直さなければならない時は来ます。このままこの方向に進めば、保育園も、学校も、家庭さえも、子どもが育つ場としては相応しくない場になってしまう。福祉それ自体が人間性を失っていく。
 方向転換がいかに早く来るか、それがこの国の運命を左右するのだと思います。

 選挙が始まろうとしています。もう何がなんだかよくわかりません。
 民主党が、駆け込みで保育園を増やす予算を組みました。最後にいい事をやっていることを見せたいのでしょう。保育士もいないのに…。箱ものをつくって中身のことをよく考えない。
 子どもの日々の生活と安心がこのお金でどれだけ崩れてゆくか。それがどれほど日本の将来に長期的に悪い影響を及ぼすか。子育ての質をどれだけ悪くするか。現場を見ない思いつきの政治家と学者たちは何もわかっていない。

B06-28.jpgのサムネール画像

 子どもを三人産むと、三人目は保育料無料、という奇妙なことをする自治体の首長がいます。現場の保育士たちが嘆いていました。

 無料にすると、三人目は0歳から簡単に保育園にあずけてしまう親がたくさんいるのです。

 三人目に産まれた子どもは、三番目というだけで、そして、偶然この町長に当たったおかげで、母親にくっついて一緒に人生の最初の数年を過ごす、という人間が何十万年もやってきた運命的な体験を二度と経験することはできない。こんなのはもう人権問題です。子どもの人権を守る、ということはどういうことか、社会全体で考えるべきだと思います。
 どうしようもない理由があって、それが母親の苦渋の決断であったり、しゃべれない、主張できないその子の悲しみを誰かが想像し、魂に寄り添うように一緒に悲しむ心がまわりにあれば、たぶんそうしたっていいのでしょう。しかし、ただ浅はかな町長の「福祉」はいいことなんだ、という単純な認識が原因になって行
われるのであれば、子どもの思いや願いを想像できない人間たちの判断の積み重ねが、やがて人類を滅ぼすのかもしれない。滅ぼさないまでも、家庭という定義を失って犯罪や虐待に苦しむ欧米のようになってしまう。

 私は講演で「福祉が進めば必ず家庭は崩壊し、幼児虐待と女性虐待が爆発的に増える。それは欧米の数字を見ればあきらかだ」と言います。福祉がそれほど危険なものであることは、北欧では周知の事実で日本語に訳された本も15年前くらいから出ています。
 民主主義の危険なところは、感性と理性のととのった人間が必ずしもリーダーにならないということ。最近の政界のバトルを見ていると、程度に差こそあれ、パワーゲームに明け暮れて感性と理性のバランスを失っている人が多い。これが終わって落ち着いた時に、何か変化があれば良いのですが。

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