園児は騒音?/保育公定価格試算ソフトの混乱/「保育園開業・集客完全マニュアル」

 園児は騒音?

 保育園建設に反対する住民たちのことがNHKのクローズアップ現代で報道されていました。保育園の幼児たちの声は騒音だと老人たちが言うのです。確かに、幼児をこんな風に集団にするのは不自然なのです。しかし、幸せそうに生きる子どもたちを「騒音」と感じるような社会にしてしまっているのは一体誰なのか、何なのか。戦前の道徳教育を受け、ある時期「絆」を強く感じ合う体験をした人たちが、なぜこんなことを言うようになったのか。社会全体の幼児を見る視線、視点、意識が変わってきているのです。それが世の中の空気感を変えている。最近よく道徳教育という言葉が言われますが、道徳とは社会の空気感の中で主体的に維持されるもの、またはその空気感そのものではないか、と思います。流動的で、常に作用反作用で動いてゆく、人々の意識の連動のような気がします。

 子どもを40万人保育園で預からないと女性が輝けない、と政府が言う。

 親を育て、人間性が共感する次元を整え、社会に絆を生み出すために存在する子どもたちを、大人を輝かせない障害と見なすようになっている。その奇妙で不自然な視線が少しずつ重なりあって、今の社会全体の意識を作ろうとしている。確かに新生児は人間から自由を奪うために産まれてきます。自由を奪われ、自由を捧げ、絆をつくり、人間は一人では生きられない自分に幸せを感じ成長した。そこで育まれる「利他」の心が、社会にモラルと秩序を与えてきた。

 本来幼い子どもたちをたくさん集めて一緒に生活させることは不自然なのですが、その音が不快に思えるようになってきた。マスコミとか政治家とか、社会の意図を左右する仕組みが、弱者の役割りとその願いを理解しないから、その無理解が意思となって伝わって行き、「弱者の幸せ」が騒音に聴こえるようになる。夏の蝉の声は苦痛ではないのに、深層心理の次元で「幸せの音」が苦痛になってきている。

 一日保育者体験をした親たちの感想文を読むと、たった8時間幼児たちに囲まれることによって人間の感性がずいぶん変わることがわかるのです。遺伝子がオンになってくる、という感じでしょうか。言い換えれば、それまでどれだけオンになるべき遺伝子がオンになっていなかったかがわかるのです。

 

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 筑波大名誉教授の分子生物学者、村上和雄氏の「生命の暗号」という本に、遺伝子がたくさんオンになるほど良い研究が出来る、感性が磨かれる、と書いてあります。そして、遺伝子をなるべくオンにするには、感謝すること、Give&Giveの気持ちで生きること、その典型が乳児を育てる母親、と書いてあるのを読んで、感動したことがあります。

 

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 男が授乳できれば結構遺伝子がオンになるのでしょう。そんな風に考えたことがあります。しかし、それは宿命的に無理なのです。男女は陰陽の法則のなかで助け合うために相対的、必然的発達障害の関係にある。今の世の中、昔は当たり前だった、父親が乳幼児を日々抱いて遺伝子をオンにする時間が極端に短くなっています。だから年にたった一日、八時間でもいい。父親を人間らしくする一日保育士体験を薦めています。

 「親心を育む会」のホームページに父親たちの感想が数百載ってます。人間が変質する瞬間が見えます。とても、効き目があります。

 経済競争というパワーゲーム(マネーゲーム)に組込まれた子育ての社会化が、親らしさで心を一つにする(男女の差異を調和に発展させる)部族の定義を揺るがしています。

 最近陰のベストセラーになっている「逝きし世の面影」渡辺京二著の第十章、(子どもの楽園)を読むと、150年前、幼児を崇拝し眺めながら楽しそうに生きていた日本人たちの安心感と笑顔が、それを書いた欧米人の魂を揺さぶった瞬間が見えてきます。インドや中国をすでに見て知っている欧米人が、なぜこの国を「パラダイス」と書き残したか。貧しきものは幸いなれ、と言った聖書の言葉が、幼児を中心に生きることでいとも簡単に具現化されることに気づいたからだと思うのです。

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 第十章だけでもいい、生きる力を失いかけている中学生、高校生に本当の日本の歴史を知らせるために読んであげて欲しい。男たちがこれほど幼児と一体となって暮らしていた国はない。百五十年前にこの地に来た欧米人が時空を越えて私たちの本質を知らせようとしています。

 貧しい人たちも輝いていた。これが誇るべき、自慢すべき、日本の姿のはず。この章と保育体験の組み合わせで、きっと生徒たちには伝わるはずです。生きることの意味が。

 

 子育てに幸せを感じ、心を一つにし、人々が安心すると、競争が止まり今風の経済は減速するのかもしれない。しかし競争の対極にある幸福観を持つのがこの国の個性ではなかったのか。

 

保育公定価格試算ソフトの混乱

 

 消費税を上げるのか上げないのか、政府が揺れ始めている。進むも地獄、返すも地獄と報道されていましたが、保育界は過去例がないほど混乱しています。そんな中、コンサルティング会社が元気です。仕組みの抜け穴を読み解きコンサルティング料を取って、保育でいかに儲けるかを指南しています。子どもたちのための保育が、ビジネスチャンスとしての保育に変えられ、そして「保育園開業・集客完全マニュアル」(後述)なるものまで現れる。今まで積み上げて来た保育の伝統とは何だったのか。ここまで来ると新規事業の最前線では、乳幼児の命、そして子どもたちの人生を左右するはずの幼児期の子育てが変質し、保育の無法地帯化が始まっている。

 

 来年四月から始まる子ども・子育て支援新制度は消費税が10%に上がる前提のもとに「前倒し」で進んでいます。消費税を上げるためのスケープゴートに使われたのかもしれない。保育園、幼稚園、認定こども園各種、小規模保育、家庭的保育事業、一号認定、二号認定、三号認定、何人ずつ子どもを預かればどれだけの補助が出るのか、計算するソフトが内閣府のページからダウンロード出来るのですが、6月のバージョンには問題があって8月に新たなバージョンが出来、それを使いながら園長設置者たちが本当はよくわからないまま損得勘定で決断を迫られ、十月の募集に間に合わせるために役場も条例の改定、市議会での決議、と五里霧中、指示されるままに進んできてしまいました。

 そしていま、国の「子育てしやすい国づくり」が「待機児童の解消」=「保育園を増やすこと」とする考え方に、日本人が違和感を覚えなくなっている。

 

 だから、「子育て」に直面している保育士が自己矛盾を感じ始める。(そして、園児が騒音と見なされるようになっている。)自分たちが、一歳児なら園児6人に保育士1人、4、5歳児だと30対1でやるのが本当に「子育て」なのだろうか。そして、「子育てしやすい」の「しやすい」という言葉の中身を考えて立ちすくみます。自分たちが頑張ることが、「子育て放棄しやすい」を意味しているのではないか。その疑問と葛藤が保育の現場の根本に芽生えたから、新制度はいくら継ぎはぎの修正をしても、迷走を続けるしかないのです。

 

 幼稚園と保育園は仕組みの成り立ち、意図が違います。安易に一体化しようとしても、民主党の「子ども・子育て新システム」から続く主旨の姑息さが必ず現れる。いくら計算ソフトの改訂をしても、紆余曲折の後、結局は、長年かけて作られた仕組みに戻るしかなくなってくる。いま意識の転換をしても、どこまで戻れるがわからりませんが、しかし、これを前倒しで進めている政治家と行政は意地でも戻ろうとしない。

 

 少し専門的なテーマになってしまいますが、

 私立の90人定員の保育園がこども園に移行し、一号認定(幼稚園並み保育時間)の子どもを15人にすると、地域やこれから決まる公定価格によって多少差がありますが年間二千万円くらいのプラスになります。いくつかの自治体に試算をしてもらいましたが、15人という数字がマジックナンバーになっている。この仕掛けを知っている園もあれば、知らない園もある。気づいた役人は震え上がり、知らない役人もいる。

 こども園に移行させるために、ここまで税金をインセンティブに使う政府の理念と哲学が見えません。介護保険のように市場原理で財政削減に結びつけようとしているのか、保育園と幼稚園の間にある子育てにおける差別感をなくそうとしているのか、単なる設定上のミスなのか、いずれにしても子ども優先の施策ではない。こんなやり方は明らかに財政的に続かない。自治体が負担分に耐えられなくなる。

 東京都は元々国の補助以外に保育園には多額の手当が出ていて結果的に加算にはならないので関係ありません。公立も一般財源化されているので無関係。2号3号ですでに待機がいる地域では一号認定を加えようとしても市の認定が降りないのかもしれない。しかし地方の、待機児童がいなくて幼稚園がないような地域(全国で2割、人口一万人以下の自治体では5割)では、園児の3割くらいが本来は一号認定に入るべき子どもたちで、在園児の15人に一号認定になってもらいこども園に移行することは充分可能です。これをすれば保育士一人月額5万円くらいの加算になるかもしれない。こども園という「幼稚園のいいところと保育園のいいところを合わせて」という政府がいまだに言い続ける仕組みの理念は、保育士不足の現実から考えると机上の空論だとしても、保育士の待遇の悪さに心を痛めている園長・設置者にとって年二千万円は魅力です。この加算の仕組みが、もし一部の人たちにだけ意図的に知らされていたとしたら、保育施策を覆すスキャンダルです。

 

(関連して、ある市の課長から)

 当市では、子ども・子育て支援法第28条第1項第2号の「特別利用保育」を利用する子どもの受け入れを決定していますが、国からの情報がありません。保育所の公定価格試算ソフトに特別利用保育の項目を入れる等の対策を講じていただかなければ、認定こども園と保育所の比較を正確に行うことは困難です。至急対応いただきたい課題です。

(「特別利用保育」は保育園に一号認定の子どもを入れてゆく仕組みで、もともと幼稚園が無いような自治体で、いい課長が「子どもは親と過ごしたがっている」と考える時に、従来疑わしい就労証明書で受けていた子どもたちを本来の一号認定に戻してゆく場合に有効な手段です。この市では公立保育園がほとんどなので、条例を作り市の指導でこういう施策が可能です。私立保育園が予算獲得のために認定こども園になり一号認定を十五名入れれば大きな加算となるのに、公立保育園が、親の必要な時間だけ預かるという保育園の本来の姿に立ち返るために進める良心的な手段における補助金の算定が公定価格試算ソフトに入っていない。付け焼き刃の施策の盲点や矛盾点、バグがますます明らかになってきます。)

 

 

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 家庭の問題を理解し親身にならざるを得ない園長先生は、卒園式の日に園児をそっと送り出す。祈るような気持ちで...、背中を押す園は子育てをしている。子どもたちにとって家庭であって、ただ預っている場所ではないから、その気持ちが親に伝わらないことに傷つく。

 良くない事件が起こると、どこかに身を凍らせている園長を感じる。

 

 

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(保育行政を超えて児相や児童養護施設まで関わり、凄い行動力で、親身に動き続ける女性の役人からメールが着ました。児童虐待を止めるために、家の前で張り込みをするような女性です。)

 

こんばんは。

あすは、市長と市議選のダブル選挙です。

保育園のお迎え時間に、門扉の前でビラ配り。節操のない状態に心が痛いです。

これまで保育に全く関心のなかった市議でさえ、初当選から保育の問題を説いてきた!と言います。(これを偽りと云わずして何を偽りと云うのでしょう)

どんな結果になっても、保育を政治的な判断で決めない人であってほしいと思います。

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松居様

 

いつもTwitterを拝読しております。

私は都内北区在住の3歳と1歳の男の子を持つ母親です。

松居様のTwitterを知り、ご本も読んで勉強させて頂いております。

本日の日本経済新聞夕刊一面に、

「都立公園内に保育所・東京都が待機児童解消策」と言う記事がありました。公園を潰して保育所を建てるとあるのです。悲しみと同時に薄気味悪さを感じました。子供達が、母子が集う、近隣住民の憩いの場を潰して保育所を建てると言うのです。そこまでして母子を引き離そうとする薄気味悪さ..もし可能ならば松居様のTwitterなどにご意見を発信して頂きたい

そう思い、非礼とは思いましたがメールさせて頂きました。

私は会社員で、3歳の長男を一歳から保育所に預けました。育児休暇は一年間。預ける事になんの抵抗もありませんでした。当然と思いました。ですが次男の育児休暇の今、とあるブログをきっかけに思いを改め、そして松居様や長田先生のご本を読み、変わりました。仕事を辞め、子供を自分で育てようと言う考えに変わりました。今は、このままでは日本の母親は産んだ子供は保育所に預けるのが当たり前になってしまうのではと、怖くなります。今日の様な記事を見ると

自分の事しか出来ない一般人の私です。松居様に日本のお母さんに気付きのきっかけを作って頂きたい。そう思い、メールさせて頂きました。どうかよろしくお願い致します。

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 お手紙ありがとうございます。とてもよくわかります。社会全体が、何か肝心なものを忘れて、当たり前のように、後戻り出来ない方向へ進んで行きます。

 必ず母親たちの心のブレーキがかかると信じて、書いたり、講演したりしています。そうするしかありません。ですから、こういうお手紙をいただくと嬉しいのです。少しずつ、気づけばいいだけなのだ、と思います。

 仕組みの状況に関しては、どの部分から変わり始めるのか、どの部分から手を付けられるのか、ちょっとわからないほど保育界全体が追い込まれている。虚しいくらいの状況ですが、頑張ります。もし、私にできることがありましたらおっしゃって下さい。講演でよければ行きます。大切なのは、母親たちが声を上げることだと思います。幼児のためにはそれが一番自然で、効き目があると思います。

 

松居

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(ある役場の人からのメール)

消費税の引き上げと子育て新法案について

今年の4月から、消費税が8%になっことに伴い、臨時特別交付金及び子育て世代特例給付金が支給されました。このロジックに国民は騙されてはいけません。お金をばら蒔いて、誤魔化してるとしか思えないのです。介護保険がはじまった2000年、その前年の1999年、当時の小渕内閣が行った地域振興券。これは、15才未満を持つ世帯に金券千円をこども一人あたり2万円分支給したもの。40才から介護保険料の負担を強いる前にバラまいたとしか思えません。消費税10%引き上げを目前に控え、またバラまき政治と思えるのは私の歪んだ感性からでしょうか?

 介護保険法と子育て三法案。

おなじ厚労省がやっていることとはいえ、ロジックが似すぎています。介護保険料は5年おきに改定。国民の負担は増えるばかりです。これも最初から引き上げねらいでしたから、あくどいですね。子育て政策も、今はおいしい事をいっても、梯子をはずされるのは目にみえています。保育園・幼稚園経営者の先見の明を望みます。

追伸

今月臨時国会で可決した「女性活躍推進法」()について。ゆっくり和先生とお話ししたいです。

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(園長先生からのメール)

船井総研に次いで、どしどしビジネス保育の営業が増え始めましたね。安易に保育を始め、事故や問題おきたら逃げてしまうんでしょうね。事故というより刑事事件であることも理解しないままに。

 http://www.info-studies.com/hoiku-top/

 小規模保育がターゲットだそうです。

 

(内容は)

「保育園開業・集客完全マニュアル」

 〜起業したい、独立したいというあなたの夢をかなえます。今ビッグチャンス到来の保育園開業マニュアルです。

 コンサルティング会社に依頼する100分の1の価格で開業ノウハウ全てが手にできます。〜

 

*独立・起業を考えているが、何から、どう始めたらよいかわからない。

*自己資金がなくてもできる起業を探したい。

* 自分ひとりで始めるのは不安がいっぱいだ。

 *安定した収入が入るビジネスにはどんなものがあるのかわからない。

 *フランチャイズは失敗してもFC料金を払わなくてはならないのが不安だ。

起業をしたいと思ったときがチャンスです。ネットビジネスも儲かるのでしょうが、やはり安定した収入は確保したいものです。しかし、単に「起業」と言っても、何をどう始めたらよいのか、どんな手順を踏んで、どんな書類を用意しなければならないのか、わからない方がほとんどです。

そこで、「保育園開業・集客完全マニュアル」をあたなにお届けいたします!

1つのご提案として、本マニュアルには、今まで保育園経営などにまったく興味のなかった方にも一からご理解いただけるようにわかりやすい手順が説明されています。保育園開業・集客完全マニュアル」をお読みになった方は、そのほとんどが興味を持たれ、開業されたオーナー様も多くいらっしゃいます。勇気をもって新たな一歩を踏み出すお手伝いをさせていただければ本望です!

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(私の意見:保育は「何から、どう始めていいかわからない」人、「今まで保育園経営などにまったく興味のなかった方」がマニュアルを読みながらやる仕事ではないはず。こんなことが市場原理として政府によって推し進められているのです。だから保育園が騒音に聴こえてくるのです。)

六年前の状況から新制度へ/塩・味噌・醤油(天才保育士)/「子育て支援員

以前にもブログに書いたのですが、6年前に著書「なぜ,私たちは0歳児を授かるのか」に「閉じ込められるこどもたち」という章を書きました。当時認可外保育園で儲けようという動きが全国展開を始めていて、フランチャイズ料と指導料で大きく稼ぐ会社が衛星チャンネルやインターネットで宣伝を打っていました。しかし、その内容は、子どもたちの安全性、保育の質を考えると継続性が見込めない、非常に危ういビジネスの形でした。お金を儲けるための親支援、子どもたちの気持ちなどほとんど意識しないやり方でした。

当時「厚労省の資料を調べると、平成十九年度に新設されたベビーホテルが全国で193カ所、廃止休止が177カ所。認可外保育施設は594カ所が新設され492カ所が廃止休止です。」

大人の都合優先の方向が洗練され大規模になり、変えられずに進んできた先に「子ども・子育て支援新制度」があります。そして、また先月、川崎の認可外小規模保育園で小さな命が宿泊保育中に亡くなっているのです。正直、やりきれない思いです。

乳幼児を預かれば事故は起きるでしょう。乳幼児は弱者です。特別注意を払っていても人間は完璧ではありません。子育てをしていれば仕方のないことです。でも、認可外保育園で事故が起る確立は乳幼児だけを比べても認可の8倍と言われます。保育士の人材確保が困難な状況で、小規模保育や家庭的保育事業には安全性という観点からは無理があることはこのブログにも書きました。それを国の新制度は、来年の四月から補助をより手厚くし増やそうとしている。大手コンサルタント会社がそれを知って、小規模保育でどう儲けるかという宣伝を全国展開で煽っている。しかし、保育士の待遇改善は微々たる物。経済対策が優先し子育てにおける倫理観が欠如してきています。

その国が一方で「道徳教育」と言うのです。「道徳」の定義はよくわかりませんが、親が子を慈しみ、子が親に敬意をはらう、始まりはそんなことではないでしょうか。国の「子育てに関わる」施策がその両方を壊している。学校における「道徳教育の推進」などと言って誤摩化しても、国全体のモラルや秩序は国の保育(子育て、親育ち)の軽視で、ますます疲弊してきています。

40万人保育園で預かれ、しかもそれを成長産業と位置づけ、そこでその時子どもがどういう体験をするかということに対する配慮がまったく感じられない。国の成長戦略の中で「子どもの成長」と「親の成長」が無視されている。そして、結局将来の戦力/人間力が弱まってゆく。

人類の歴史から考えて、男女が共同して参画する行為の第一番が「子育て」だったはず。その機会を、国が施策で取り上げようとする。しかも男女共同参画社会という言葉を使って。現在の政府にとって「社会」は経済競争でしかない。そんなやり方でいいのでしょうか。言論の自由はまだ確保されているのです。マスコミや報道の見識が問われているのだと思います。

(六年前の文章です。)

閉じ込められる子どもたち

 

フランチャイズ制の認可外保育施設を全国展開している会社が、保育施設の経営を保育の経験がない人たちにまで勧めています。私の講演を聞いた人から、保育園をやって年収八〇〇万円くらいになるのですか、とメールをもらってびっくりしました。開設費や指導料を最初に計三〇〇万円払い、フランチャイズ料を月々五万円払う仕組みだそうです。規制緩和に乗じて大元の会社が指導料で利益を上げているような気がしてなりません。

「一人保育士がいれば、あとはパートでいいんです」「三つ経営すれば月100万円になります」と言われたそうです。利用者向けの宣伝には、「母親に代わり知育・徳育・体育をします」と書いてあります。開設をすすめるパンフレットの人件費の計算書は、時給八五〇円×七時間×二五日×保育士の人数。時給八五〇円で六人の子どもの母親に代わり知徳体の子育てができるのだったら、文科省も厚労省も苦労しません。

厚労省の資料を調べると、平成十九年度に新設されたベビーホテルが全国で193カ所、廃止休止が177カ所。認可外保育施設は594カ所が新設され492カ所が廃止休止です。こんなビジネスに、自分の意思では過ごす場所も決められない幼児を年に250日も預けていいのでしょうか。ベビーホテルの95%に立ち入り調査が実施されていますが、70%が指導監督基準に適合せず、認可外保育施設の77%に立ち入り調査が実施され、半数が指導監督基準に適合しない。

いままで規則で守られていた保育界を、民営化の名のもとに利益を追求する会社が参入できるように「改革」したのは、これまた保育に素人の、いや私に言わせれば「人間に素人」の経済学者と政治家たち。福祉はサービス、親のニーズに応えますと言って票を集め当選し、国の予算が破綻してくると福祉の予算は簡単に減らされ「民営化」です。選択肢のない子どもたちが泣いています。女性の社会進出で税収を増やそう、という切羽詰まった目的を、サービス産業には競争原理を持ち込めば質が上がる、という安易な経済論でカモフラージュして進めているのです。以前、女性の社会進出で税収を増やそう、という目的が、女性の人権というカモフラージュで進められたときと似ています。

しかし、子育てのサービス産業化はいずれ社会全体のモラルと秩序の低下を招きます。人間は子どもをないがしろにしたときに、自ら良心を捨てるからです。人々の心に疑心暗鬼が広がります。離婚が増え、経済はますます悪くなり、いずれもっと深く大きく破綻するでしょう。必ずどこかで誰かにつけが回ってくる。地球温暖化と似た構図です。

私は六割の結婚が離婚に終わるアメリカの状況を考えていて、これが地球温暖化の原因の一つでは、と思ったことがあります。一つの家庭が分裂すれば、釜戸が二つに、冷蔵庫も二つになります。電化製品メーカーにはいいでしょうが、温暖化ガスの排出量は二倍です。輸出に頼ってきた日本には一時的によかったのかもしれません。しかしその結果、私たちは人類として大きな代償を払わなければならなくなってきているのです。

すでにこうした無認可のフランチャイズ制の託児所が、全国に何百カ所も作られています。子どもたちが毎日「親らしさを放棄しようとする仕組み」を体験し育っていくのです。とりかえしのつかない未来への負の遺産です。

私が見に行ったところは、25畳くらいの部屋に40人前後の子どもが預けられている保育所でした。異年齢が一緒に受ける「混合自由保育」を売りにしていますが、一部屋ではそれ以外にはできません。一番私が耐えられなかったのは、この状態だと一日中「静寂」がないことです。異年齢の子どもを一斉に静かにさせることは不可能です。〇歳児と一歳児が偶然眠ってしまったときに、二歳児三歳児にひそひそと読み聞かせをし、四歳児五歳児に静かに遊んでもらう。そんなことは天才保育士でも不可能です。

静かな時間がない環境で、保育士と子どもたちが一日八時間以上、年に250日過ごす。園庭がないと、反響板の中に常に閉じ込められている感じがします。逃げ場がないのです。

もう一つ気になったのは、保護者会がないこと。これをやると園児が集まらない。親へのサービスが第一なのです。週五日預けている親に、「土曜日も夫婦で遊んできてください。お預かりしていますから」と言うそうです。こうした小規模園では親に対するサービスが死活問題になのです。

認可外保育所は二人に一人が保育資格を持っていればいい。そのうち、資格を持たない男性のパートを安易に入れるようになったら、と考えると恐ろしくなります。

アメリカで30年ほど前に、保育所や幼稚園における男性職員による性的いたずらが社会問題になりました。訴訟が怖いから、と保育士に「なるべく園児に触らないように」という指示を出していた園長先生を思い出します。男性保育士がいけない、と言うのではないのですが、ある日本の女性園長が、「保育士は毎日何度もオムツを替えます。娘さんが知らない男性に毎日オムツを替えてもらって、あなたは平気ですか?」とおっしゃった言葉には、真理と洞察があります。男女平等という弱者をも競争に巻き込もうとする争いよりはるかに深い、人間の性、修羅にもとづいた直感的なルールが人間社会にはあるのです。

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(そして今)

 当時のことを鮮明に憶い出します。六年経って、子ども・子育て新システム、新制度、混乱の中で「子育ての社会化、市場化」は確実に急速に進み、その結果としていい保育士が大量に辞めていきます。いまごろ保育士の時給850円で始まった保育園はどうなっているのでしょうか。多くが辞めていったとして、その過程で子どもたちはどういう日々を送ったのでしょうか。そして、六年前市場原理で始まった危うい動きが閣議決定で「保育は成長産業」と位置づけられ、後押しされ、国規模で進められようとしているのです。働く親たちが安心して子どもを預けられる環境などもう望めなくなっている。

小規模保育が自転車操業に陥った時に、「預かっていますから、週末夫婦で遊びに行ってらっしゃい」という言葉が平気で園長の口から出るようになるのがサービス産業。少子化の現実の中で、営利を目的とした小規模保育ほど経営の先行きが見えない自転車操業に陥りやすいのです。毎年3月に、4月に何人保育士を確保したらいいかわからない状況になる。呼び込みのような事実とは異なった宣伝が始まる。その宣伝がまた次の事故を生んでいる。(http://kazu-matsui.jp/diary/2014/09/post-210.html)

そのずっと以前に園長は親(客)に小言も注意も言えなくなっている。園を継続させるなら、心を閉ざすしかないような事態になっている。(http://kazu-matsui.jp/diary/2014/10/post-217.html)

子どもの未来につながる園での幸せが、今日・明日の経営に埋もれてゆくのです。当時、良いことをしようと脱サラまでして貯金をはたいて始めた夫婦の事業が、アッという間に、幼児の最善の利益を優先しない危ない保育産業になってしまうのを見ました。

そんな環境の中で、客の顔色をうかがうサービス業には向かない、一見要領の悪い、けれど心の温かい保育の天才たちが一年くらいで辞めていきました。いい園長先生が数年時間をかけて、伝承が生きる良い環境の中でしっかり育てればきっと長く続くいい保育士に育った人たちが、「保育とは呼べない保育ビジネス」を1、2年体験し去ってゆきました。そして、彼女たちは二度と戻って来なかった。自分の子どもを保育所には預けなかった。天命の職場には戻らず、家庭に入っていった。

親たちに対するサービス業に向く人と、乳児・幼児に好かれる生まれながらの天才保育士は異なる素質を持った人たちです。親の要求を仕事として受け入れられる人たちと、子どもの幸せを願って暮らす人たちは、相容れない人生観と才能を持った人たちです。子どもに話しかける声のトーンが違います。見つめる時の笑顔の質が違います。

だから保育界では、ビジネスに向く管理者はいい保育士を引き止めることができないのです。

いま株式会社系の大手保育チェーンが必要な人数の三割増しくらいの求人をするのは、毎年三割程度の社員が現場を去ってゆくことを知っているからです。でも、彼らが知らないのは、そういう保育士たちの中に保育界の将来の宝がいた、ということ。三歳未満児を「あなたは愛されている」「だからだいじょうぶ」「生きることは美しい」と包み込む、30年後には道祖神園長になったかもしれない、両親や祖父母、まわりの人たちに可愛がられ手塩にかけて育てられた気持ちのやさしい人たちがいた、ということ。

塩・味噌・醤油

ある園長先生が話してくれました。

養成校の教授に信頼されているその園長は保育士を育てるのに定評があります。ある年、保育士に欠員が出たため4人の卒業生を推薦してほしいと教授にお願いしました。

四人を選んでくれた教授が園長に笑いながら言いました。「二人は、将来現場でリーダーとなってゆく優秀な学生たちです。もう二人は、学業には向かないけれど天才的な保育士です……」

園長は一応形式的に筆記試験をしました。栄養の三要素は何ですかという問いに、天才保育士の1人が「塩、味噌、醤油」と書いたのだそうです。

園長はそこで大笑いをし涙ぐみながら私に言うのです。「この塩、味噌、醤油が、本当に、本当に保育の天才でした」

昔、ある園長が私にささやきました。「明るくって、元気がよくて、何でもできる保育士ばっかりだったら、子どもは疲れちゃうんだ。五人に一人くらいは暗くてやさしい保育士がいなくちゃね」。子育てとか家庭はバランスなんですね。それぞれが役割りを持っている。

また、ある園長が私に言いました。「園長がしっかりしていたら、主任は少し暢気なくらいがいいんですよ。主任がしっかりしていたら、園長はのんびりしているといいんです。両方のんびりしていたら困るけど、二人ともしっかりしていたら、保育士も子どもも息がつまってしまう。色んな家庭から来た子どもを大勢預かっているんですから、園の雰囲気といいますか、バランスがとても大切なんです。年月が必要なんです」

こうしたことはなかなか学校では教えてくれません。家庭という形に正解が無いように、園という形にも正解はありません。でも、0才1才2才児を預かる時、彼らが園であったことをちゃんと家で報告できない、ということだけは忘れてはいけない。私は毎年これだけたくさんの園を25年間に見てきて、そこで時間を過ごしてきて、あってはいけない風景や、それを体験した保育士と出会い、それを無くすことはできないけど、減らさなければいけないと思うのです。

どんな母親でも、まわりに数人相談相手がいればかけがえのない母親になれるように、学業には向かなくても書類づくりはまるで駄目でも、天才的保育士はいい園長に当たって数年で一人前の保育士、園という家族の一員に育っていったものです。少しの忍耐力と優しささえあれば、かけがえのない園の一員に育っていきました。

毎年、株式会社や派遣会社で2、3割の保育士が辞めてゆく話を聴くと、いい園長に出会っていれば、数年で、ときには20年くらいかけて、立派な保育士に育った子たちがその中にいたんだろうな、と思ってしまいます。

 

首相の所信表明演説から

「子育ても、一つのキャリアです。保育サービスに携わる「子育て支援員」という新しい制度を設け、家庭に専念してきた皆さんも、その経験を生かすことができる社会づくりを進めます」

ーーーーーーーーー関係資料

「子育て支援員」資格新設、主婦も20時間で保育従事者に 2015年度から

政府は2015年度から「子育て支援員(仮称)」資格を新たに設ける方針を固めた。育児経験がある主婦などが対象で、20時間程度の研修を受ければ、小規模保育を行う施設などで保育士のサポートにあたることができる。5月28日、女性の社会進出などを議論している政府の産業競争力会議で、厚生労働省などが提案した。時事ドットコムなどが報じている。

背景に不足する労働力

政府がこのような制度を設置する方針の背景には、保育人材の不足がある。政府が2015年年度から施行する「子ども・子育て支援新制度」では、保育所や小規模な保育施設、学童保育施設を増やすとしている。事業の拡充に伴い人材の確保が必要となるが、保育士不足は現状でも深刻な状態が続いている。

このため政府は、子育て支援員資格を整備することで、担い手を確保する仕組みを整えると同時に、子育て中の女性や、子育てが一段落した主婦の社会進出を後押ししたい考え。

■保育士の給与を引き上げにくい理由

厚生労働相の資料によれば、2017

年末には保育士が約7.4万人不足するとされており、政府は対応を迫られている。保育士確保の対策として、保育士の資格を持っているが現在は保育士として働いていない「潜在保育士」の掘り起こしや、離職者を減らすための研修実施などが挙げられているが、給与面での保育士の待遇を改善することも喫緊の課題だ。しかし、なかなか保育士の給与を上げにくい状況がある。保育士の給与を上げるためには、その元手が必要だが、行政が保護者が支払う保育料の上限を設定しており、その上限を超えると行政から補助金が下りなくなるのだ。保育所が預かることができる子供の人数は、保育所の広さや保育者の数で、決められるため、ひとつの保育所が得られる収入には限りがある。そのため保育士の給与を上げるためには、「保護者が支払う保育料の上限を引き上げる」、「ひとりの保育者が、預かることができる子供の人数の規定を増やす」、もしくは「行政が支払う補助金の額を引き上げる」などの対応が必要になる。政府は「子ども・子育て新制度」の予算で、保育士の処遇改善を行う予定だった。しかし、新制度の財源が不足するとわかったため、保育士の給与アップについては、当初の最大5%増から3%増にとどめることになった。政府の子ども・子育て会議は現在も、保育所に支給する補助金の額や、利用者の支払う保険料について議論が行われており、今後保育士の処遇についても算定するという。

■准保育士は何のために生まれたのか

実は、准保育士の話が出たのは今回が初めてではない。2007年の第1次安倍内閣時にも、当時の規制改革会議の中で登場している。なぜ、このタイミングで准保育士は再び議題に上がったのか。当時、准保育士の提案を行ったのは、人材派遣事業を展開するパソナ。保育士の受験資格を規制緩和することが目的だった。大卒や短大卒であれば専攻の内容にかかわらず、実務経験がなくても保育士の試験を受験できるのに対し、中卒や高卒の人は実務経験がないと試験を受けることすらできない現況をおかしいと考える人が、同社の社員や登録者に多かったためだ。同社が行ったアンケートによると、「気持ちと熱意のある方には資格や知識は必要だと思うが学歴は関係ない」という意見や「専攻にフィルターがかかっていないのであれば学歴は意味が無い」などのコメントが寄せられたという。2007年当時は、実務経験についても児童福祉施設に限られており、その児童福祉施設も採用自体が少なかったことから「最初からシャットアウトされているのではないか」とのコメントも出ていた。

当時、パソナに派遣社員として登録する人のなかには、子育てが一段落した30代、40代の人もおり、自分が子育てで経験したことを、社会貢献のひとつとして活かすために時給800~900円でもやりたいと考える人がいた。しかし、資格が無いために保育の現場には派遣しにくかった。そこで、准保育士などの資格を作り、保育所で補助的な仕事をしながら実務経験を積んだ後、正規の保育士としての受験資格を得るような道筋がつくれないか、という提案が行われたのだ。

「失敗しない保育園選び」??

 ある園長先生からこの記事が送られて来ました。
 こんな記事を読んで、子どもの気持ちを優先に保育する園長たちが辞めてゆくのだと思う。http://diamond.jp/articles/-/59676
 今年は特にそれが多い。待機児童を無くせという合唱が「保育/子育ては国がやるべき当然のサービス」という姿勢を一部の親たちに植え付け始めている。本当にそれでいいのですか?
 こういう苦言を呈してくれる人たちが実は子どもの成長にとって現場で重要な役割りを果たしてきた。保育士にも苦言を呈し、若い保育士を育ててくれた。乳幼児の安全に欠かせない人たちだった。その人たちをこんな風に扱っては保育自体がその本質を変えざるを得ない。そのしわ寄せは義務教育の方にも確実に着ています。アメリカほどではないですが、子どもの気持ち考えられない親たちが学校教育を疲弊させている。
 「子育てはなるべく保護者が汗をかいてやるべきという、悪しき根性論」こんなことを正論のように「実用ライフスタイル雑誌」という出版物に「失敗しない保育園選び」と題して載せる人たちがいる。保育士側からすれば、「子育てはなるべく保育士が汗をかいてやるべきという、悪しき経済論」とも言える。一緒に子どもを育てている、心をひとつにするべい人間同士がこんなことを言い合う仕組みなどもうやめた方がいい、と思ってしまう。いったい幼児の気持ちはどうなるのだろうか。

東京保育園ランキング by ダイヤモンドQ

世田谷区の保育園を大胆にランキング!
はっきり分かった”株式会社”の高評

http://diamond.jp/articles/-/59676

我が子を保育園に入園させる道は長くて険しい。大都市では女性の社会進出に伴う保育園不足が深刻であり、保育園に関する情報が少ないためにどこを選べばいいのか分からないという保護者も多い。そこで、実用ライフスタイル雑誌「ダイヤモンドQ」編集部が、「失敗しない保育園選び」のために実用的な情報を紹介しよう。第1回は、最も待機児童が多いことで注目されている世田谷区の保育園事情を明らかにする。

「子どもが通っている世田谷区が経営している保育園では、子どもの昼寝用布団のシーツは保護者がかけることになっています。夏になるとクーラーがかかっていない熱い部屋で汗だくになってシーツ掛けをさせられ、とても嫌な気分になります。ほかにもスーパーのレジ袋を提げて行ったりするだけで、園長や保育士から怒られます。買い物に行く時間があったら、1分でも早く子どもを迎えに来なさいということなのでしょう。子育てはなるべく保護者が汗をかいてやるべきという、悪しき根性論がはびこっており、時代錯誤もいいところです」

 世田谷区営の保育園に子どもを通わせているこの保護者は、前近代的な経営方針や考え方に嫌気がさし、ついには別の保育園に転園したという。こうした保護者の悩みは実はよく聞かれる話だ。公営の保育園が昔からのやり方に固執するのに対して、株式会社経営の保育園はサービスが充実していて柔軟な対応ができると一般に言われてきた。 

 ダイヤモンドQ(創刊準備1号)の特集「失敗しない保育園選び」では、利用者が安心できる保育園の視点でランキング「東京ベスト保育園594」を作成した。各保育園を100点満点で評価し、市区町村ごとに点数の高い順に並べた。その結果、公営と株式会社経営では、主に保護者からの評価に大きな差があることが判明した。

本邦初の東京保育園ランキング
上位594保育園を点数で評価した

 ランキングは東京都内の認可保育園・認証保育園を対象に、サービス内容、利用者尊重の姿勢、不満・要望への対応、組織運営力などを点数化。特に保護者の声を重視した点数配分にした。今回の調査は昨年度、第三者評価を受けており、情報開示に積極的で業務改善に意欲がある保育園だけを対象とした「ベスト保育園」なので、都内のすべての認可保育園、認証保育園をカバーしているわけではなく、各自治体で最下位の保育園が必ずしも本当の最下位の保育園ではないことをお断りしておく。その結果、世田谷区のランキング結果が非常に興味深いものとなった。

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  毎日自分の子どもを育ててもらっている園に対してこういうひどいことを言う親は昔から少しはいた。子どもの日々の生活がどこでどのように行われているか、保育士たちが人間としてどんな目線を小さい子たちに注いでいるか、想像出来ないし、しようとしない。それについては失望するしかない。しかし、この親の発言を読めば、園長先生と親と、どちらが本当に子どものことを考えているか、常識的にはわかるはず。しかし、この親の発言を肯定するようなことをマスコミが印刷して広げることはまた別問題で、マスコミが想像力や常識を失ってしまっては、ただでさえ心のこもらない保育士が増えている保育園を決定的に追い込むことになる。保育園はサービス産業、成長産業と位置づけてしまった閣議決定が背後にはある。しかし、人間社会の一般常識として、子どもの面倒はできるかぎり親が見るべき、それが親子の将来にとっていいのだ、とする園長先生の視点は学校教育や福祉をこの先成り立たせるためには絶対に必要な視点、人間性の原点と言ってもいい。それは前近代的な視点ではなく、幼児と接していれば自然に生まれる人間性だと思う。

 この記事は、けっこう話題になっているようで、保育や児相での現場、家庭崩壊の最前線で頑張っているある市の行政の女性から、こんな記事があるのですけれど、ご存知ですか?と同じ記事について連絡をいただいた。驚くのは、女性の上司でもある管理職の女性から「だから公立の保育園は駄目なのよ」と言われたというのだ。管理職の人は保育現場の経験がない、保育現場でどのように心が動いているか、まったくわからない人だった。ましてや預けられている幼児の気持ちなどは遠過ぎて考えもしない人なのだろう。こんな風に仕組みは作られている。その中で、日々、幼児に直接接する人たちが心を病んで辞めてゆく。

 この記事が推薦する株式会社系の保育園で、毎年何割の保育士が辞めてゆくか、出版社はしらべるべきだと思う。そして、良い保育園を選ぶ時に、他の親の意見だけではなく、実際に現場に居るひとたち、居たひとたちの意見を聴いてみればいい。その人たちの方が子どもたちの気持ちを代弁してくれるはず。一見不親切に見えることに大切な意味があったりする。親へのサービスは子どもたちへのサービスにはならないし、年輩者や経験者の意見にはひとまず聴いてみるべきだと思う。とくに、子育てに関しては。