親心のエコシステム

市長が壊す、再生不能な親心のエコシステム

  長年地域に根付き、思い出と絆を作ってきた公立幼稚園をなくそうとする市長。それに反対する母親たちから相談にのってほしいと言われ、広島で講演したあと、雪の日に神戸で会いました。

 「公立幼稚園は親にサービスしないから親が育つ、絆が育つ。二年保育が多いし、この辺りでは20年前、私立幼稚園の経営を邪魔してはいけないと、1年保育がありましたよ」と私。親たちの民営化反対の意図がどこにあるのか、ちょっと探ってみたのです。すみません。

 送迎バスもない,給食も、預かり保育もない、確かに保育料は安いのですが、親たちはいずれ助け合うしかない、補いあうしかない。「いいですよねえ」と言うと、目を輝かせて、「そうなんです、何もしてくれない。しかも、行事や役員など色々押し付けられるんです。そういう園が、私たちは好きなんです。心が一つになるんです」とお母さんたち。ああ、この人たちはわかっている。育ってる。

 こんな幼稚園は地域の宝。黙っていても地域に絆を生み出します。こういう園の運動会は、部族的で、賑やかで、親身で、障害を持っている園児がいたりすると、みんなで涙を流して応援する。こういう園は、一度失ったら再生不能な親心のビオトープ、エコシステム。

 それを民営化、こども園化して市長が壊そうとする。

 「市長は、こども園の方が長く預けられるし、無料になるんだ、と言うんです。私達はそんなこと望んでいない」と静かに怒る母親たち。「こども園だと無料で、幼稚園だと有料になるんですか?」と私に聴く。そんなことはないですね、そこまで嘘を言って民営化を進めたがるには何か別に理由があるはず、と答える。聴けば公立幼稚園の職員はすでに6割が非正規雇用化されている。財政も特別悪そうではない。地方の場合、こういう時は、背後に利権がらみの癒着があったりする。そうなると「子どもの最善の利益」などという言葉は通じない。

 いま国全体で起っていること、新しい仕組みに関しては、子ども主体に考えられていないこと。養成校に来る学生の質に始まり、すでに保育士不足と質の低下が止まらない。それが都市と連動していて、民営化しても派遣頼りの保育になる可能性もある。ほとんどの自治体がそういう状況の中で、公立幼稚園が十園まとまって親を鍛えながら,これだけ親に支持されているのは奇跡かもしれない。

 子育ては、最終的には自分ですればいいことなので、心配する必要はないです。幼稚園や保育園に一度も行かないと、意外にいい子が育つんですよ、という話をしたあと、将来の地域の親子のため、学校の先生たちのため、この国の子どもを守る最後の砦と思ってその市長と全力で闘ってみて下さい、とお願いする。ブログに記録していけば、親子の気持ちに理解のない市長と闘う方法が伝達出来て助かります。一緒に、頑張りましょう、と答えました。

 ひとり1人の人生が、その子育ての体験によってずいぶん変わります。それが納得の行かない公の仕組みで左右されるのであれば、具体的にその間違いがはっきりしているのであれば、必死に闘うべき時にきていると思います。

 

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無事に到着されていらっしゃいますでしょうか?

昨日、今日と、本当にありがとうございました。

こども園の話を最初聞いたときは、背筋が寒くなる思いと同時に、何とも言えない不安と憤りを感じていたのですが、市と話し合うたびに諦めの気持ちが大きくなって、市の思いにも寄り添わないといけないような気になってしまっていたことに、今日は気付かせて頂きました。

 自分の大事な宝物、自分の子育て、自分で育てたい、と、もっと自分の思いを出して、聞き分けの良い市民じゃなく、ワガママな市民になってもいいんや、と思いました。

 今一度、「子どもにとって何がいいのか?、の視点から、他のお母さんとも早速明日話し合ってみます!

〓〓頑張ります〓〓

 

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 都知事選の候補者が「4年以内に待機児童解消」を公約する。これで、どれほど保育の質が落ちてゆくか。駅中保育は便利には違いない。しかし、一日十時間、年に260日、そんな環境でいいのか。託児所化された保育園に、いい保育士を集められるのか。電鉄会社と交渉して、と言うが、将来、この方法ですでに危ない保育の質が落ちていった時に、どれほど子どもたちの安全が脅かされるか。そして心のない保育の向こう側で、学校が学級崩壊の危機に立たされる。なぜ薬物に走る子どもたちが増えているのか。帰る場所を持たない子どもたち。ずっと先に老人の孤立化が見えるのです。政治家たちはわかっていない。幼児期に子どもが過ごす環境や体験が、どれほどこの国にとって大切か。

 子育ての社会化が進むことによって、幼児を媒介とした絆が減れば、犯罪の抑止力が弱まる。すでに蓋のできない状態が始まっている。

 

 この程度の状況把握しかできていない元厚労大臣が知事が選ばれた一方で、園庭に入れる土に、徹底的にこだわる園長がいる。選び抜いて遠くからトラックで運んで来るその土の手触りに、園長の微笑みが重なる。こういうところに保育の心がある。その土壌で保育士も育ってゆく。

 

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子ども・子育て支援法と保育園の今後については、いろいろな所から説明を受けたが、さっぱり分からなかった。ところが、伊藤周平著「子ども・子育て支援法と保育のゆくえ」を読んだら、問題点がとてもよく分かった。保育関係者必読だとおもいます。(長田安司先生/共励保育園)