多くのDVや児童虐待が保育の現場で止まっていた

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岩手県でキャリアアップ助成金保育士向け講習会を担当しました。二日間で15時間、話したいことはたくさんありました。でも、15時間と言われた時はびっくりでした。以前7時間、一泊二日羽咋(はくい)で石川県の園長先生たちに話したことがありました。その時も一泊でしたから夜の懇親会なども含めれば10時間くらいは話したのかもしれません。その時の倍以上の時間です。決まって半年間少しずつ準備しました。

大学(東洋英和女学院短大の保育科)で教えていた頃、一学期でそのくらいの時間講義をしたのですし、最近の保育施策の混迷と現場の窮状を思えば、内容的には心配ないはず。大切なのは、二日間で、しっかり印象に残る講習会にできるかどうかです。レジュメをまずしっかりつくりました。

人間にとって子育てとは、私の作ったインドの映像、(http://kazumatsui.com/sakthi.html)も見てもらい、質問もたくさんしてもらいました。保育の精神が壊されてはならない、いい研修にしなければと緊張し、気合も入りました。私を信じて15時間任せてくれた園長先生たちに感謝です。

保育の「受け皿」と国が名付けた人たちが、現場でやる気を失っていく。なんとか元気を取り戻し、この仕事の重要性とやり甲斐を理解してもらい、もう少し、もう数年頑張って欲しい。ここで保育が崩れたら義務教育がもたない。国やマスコミが本当の保育の重要性に気づく日はすぐに来る。

 

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保育はサービス産業になってはいけない。子育てに「受け皿」など存在しない。その事を理解してもらわないと、子どもと接する人たちから感性が失われていく。子どもたちに一番必要なのがこの人たちの感性。この国にいま一番大切なのが、この人たちの笑顔と親身さ。

最近のDVや児童虐待の報道を見るたびに思います。20年くらい前、保育がまだ保育らしく、「子どもの最善の利益を優先する」という指針の精神が生きていて、園長や主任たちが指針に示されているように、親を導き、時には叱ることができた頃、どれほど多くのDVや児童虐待が保育の現場で止まっていたか。「あの園長先生に救われた」、「あの時叱ってもらわなかったら……」そんな言葉を親たちからたくさん聞きました。この国のモラルや秩序を保育が支えていた時期が確かにあったのです。

8時間勤務の保育士に11時間保育を標準と名付け押し付けた子ども・子育て会議の「専門家」たちは、保育の本当の役割がどこにあったか、知らないのです。これが崩れた時に何が起こるか気づいていなかったから、あんな乱暴な規制緩和を平気でやった。

一緒に「子どもを育てる」という関係が保育園での数年間で信頼を育て、幼児の親という、親として初心者に近い人たちの親身な相談相手に、どれほど多くの保育士たちがなってきたか。政府の経済施策を忖度し、無資格者が増えるような規制緩和を進める「専門家」たちは知らない。保育指針に新たに「教育」という言葉を入れれば何とかなると思っているような人たちには、保育現場のことはわからない。

「保育は成長産業」という閣議決定で、保育界に市場原理を持ち込まれ、一緒に育てるという「育ちあいの場」が社会から奪われていった。サービス産業化して誰かが儲けようと考える、親を指導するというより、親のニーズに応える方に走る。そうしてしまったことのツケが、将来この国をどれほど苦しめるか政治家たちが想像しない。

保育士たちが親に対して意見をしない、口を閉ざしてしまうような市場原理化を進めておいて、幼児が犠牲になる事件が起こると、すでに人材的に機能不全に陥っている児相や警察に責任をかぶせる。その一方で「就学前児童の養護施設入所原則停止」で最後の安全ネットを取り外し、保育界にその役割を押し付ける。表向きには里親を増やし「家庭に近い環境」で、というのだが、それなら11時間保育を「標準」と決めるのはおかしい。

子育てに関わる施策が悪循環、支離滅裂になっている。

15時間かけて、保育士たちに、貴方たちの持つ疑問や苛立ちこそが当たり前で、誰かが幼児の立場に立っていないといけない。幼児の笑顔を優先に人生を過ごしていれば、それは親たちに通じるはずです。幼児を育てている親たちは特別で、感性が開いている時。幸せになる道筋に気づこうとしている、何か一番大切なことを学ぼうとしている時です。園で、いくつかの行事を組み合わせれば、幼児たちが必ず、見事に親たちを育ててくれます、と伝えました。

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「先生は三歳神話を肯定してくださいました。久々にスッキリしました」というメールが届きました。

私の音も、ネット上でまだ鳴っている、映像もついている・ETHIOPIA Joni Mitchell

ETHIOPIA Joni Mitchell
https://www.youtube.com/watch?v=Tp4xv8S0jYk

It was great pleasure to work with Joni Mitchell!
And the sound is still alive on Internet.
Thank you Joni. Kazu

ジョニ・ミッチェルのアルバムDog Eat Dogで演奏してから30年以上になります。ネット上でまだ鳴っている、映像もついている、嬉しくなります。

まだ、世界の情勢は変わらない。