日経新聞/株式会社はノーか(保育園が足りない)

 日経新聞が「保育園が足りない」という連載をしていて、その日の夕刊は(「株式会社はノー」か、自治体及び腰、整備進まず)という記事でした。小見出しには「破綻リスク懸念」「保育士が不足」という保育界が陥っている現状を伝える部分もありますが、全体的には、株式会社の参入を進めないから待機児童が減らない、という論調です。保育施策は元々が雇用労働施策なのだ、という政府の考え方に似ています。日本経済新聞というくらいですから、経済が中心の物の見方になって当たり前なのですが、根幹にあるのは、女性が欧米並みに働かないと税収が増えず、年金も維持出来ない、女性の社会進出のためには保育園が絶対に必要、というのが考え方です。保育が子育てであり、利用者は子ども、ということは理解していないか、考慮に入れる優先順位が低い。

 記事の中に、株式会社参入を自治体や養成校が妨げている、という部分があります。「株式会社は利益至上主義でしょ」とか、「大事な学生を株式会社には出しません」と専門学校や養成校の先生から言われる。その度に、株式会社の採用担当の社員は、「株式会社でも保育の仕事は変わりません」と説得する。そして、「新設園の立ち上げにはベテランが必ず配置される。5年目のAさんは貴重な戦力」と言うのだが、その立ち上げに携わるのは二回目のベテランAさんが24歳。

 いままでの常識では、保育界で24歳をベテランとは言わない。新店舗の立ち上げではない。保育をサービス業としか思っていない。株式会社も新聞も、ひょっとして政治家も厚労省も。株式会社や派遣会社が、4、5月に養成校に青田買いに入り、「4年経ったら園長になれます」と言って学生を誘う。

 そういう採用姿勢と、早々に退職した卒業生(教え子)から保育の内容や会社の姿勢を聴くから、養成校の先生が「大事な学生を株式会社には出しません」と言うようになったのだ。

 (注:ただし、私は平均的社会福祉法人の認可園より、ちゃんとした保育をやっている株式会社を知っていますし、儲けしか考えない株式会社よりも、よくない保育をやっている認可保育所も知っています。

 それほど昔から格差はあった。それが今、認可、認可外A.B、認証保育所、認定こども園、こども園、家庭保育室、ママさん保育、スマート保育、横浜保育室、小規模保育、行政の人間さえわけのわからない仕組みになってくると、議論をするのが非常に難しくなってきます。)


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 軽度の発達障害児を担当している一年目の保育士に、どう保育していいか迷っている、確信がないという悩みを聴いた園長先生が言いました。

 「先生が困っていることと、その子が困っていることとは違うんですよ。そこのところをいつも考えていて下さい」そうだな、と思う。

 厚労省に聴かせたい。総理大臣に聴かせたい。

 横で聴いていた主任先生が、続けて、「でも、一年目に担当した子どもたちは本当に可愛いでしょう。思い入れが違います。私もそうでした。一生覚えています。一年目の保育士に当たった子どもは運がいいんですよ。だから、私の子どもが小学校で一年目の先生に当たった時は、良かったぁ、と思いましたよ」

 主任が続けます。「でも、一年目の保育士は一生懸命だから、オロオロしたり考えてばかりいて、誉めることを忘れることがあります。タイミングを逃さないように。誉める機会を探しながら子どもと過ごして、誉めた出来事を母親に伝えれば、それでいい保育が出来ますよ」

 一年目の保育士、少し涙ぐんでいました。


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 保育士が居ないのに国は「子ども・子育て支援新制度の施行(27年度予定)を待たずに、『緊急集中取組期間』(2526年度)で約20万人分、潜在ニーズを含め、保育ニーズのピークを迎える29年度末までに合わせて約40万人分の保育の受け皿を確保し、待機児童の解消を目指す」という。これが既定の方針であって、子ども・子育て会議は、それを無理にでも実行しようとしているだけ。

 この動きは、日本が20年前に批准した「子どもの権利条約」にある、子どもの最善の利益を守る、に違反している。国際的に批准した条約は、国内法より権限を持つ。これをベースに保育士たちが、子どもたちのために訴訟を起こすといいのかもしれない。

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