太古の調和かもしれない……。

マイルス・デイビスと民主主義

 アメリカという国で誕生した「ジャズ」という音楽に、巨大な足跡を残し、大統領さえ一目置く男、世界中で、一番名の知れたミュージシャンだったかもしれない。
それでも、シェリフは、気が向くと待っていて、「止まれ」と命じた。

彼が演奏している音楽は、はじめは混沌のように聴こえ、バンドメンバーが持つそれぞれの意思で、いきなり旋律から遠ざかっていく。
しかし、同じ森の中にいるかのように、そこには一体感がある。
この魅力は何だろう。
現代音楽の苦悩に近いハーモニー(調和)とは出所が違っている。
やすやすと飛び越えてくる。
太古の調和かもしれない……。

(追記)
マイルスの音楽が、畑の中の公民館で、一斉に「解放」される保育士たちの思い出と、いまでも重なる。
彼女たちの「生きる動機」は、それほど変わってはいない。

「制度」や「仕組み」を考える人々の意識の中に、音楽でマイルスが探した道筋が現れてこないことが、私たちを、「母子分離」政策というとんでもなく非人間的な政策と対峙しなければならない状況へ追い込んでいる。