「血のつながり」というインクルーシブ

欧米社会で、急速に、「血のつながり」という意識が失われていく。「血縁」に基づく「インクルーシブ」が消えてゆく。その流れを見ていると、子育てや家庭に関係する「制度」、「新たに作られた仕組み」の怖さを感じる。

今回の松居和チャンネル、第28回のテーマは、「制度が「血縁」を壊す」としました。副題は、~FAS(胎児性アルコール症)と子育ての社会化~です。

欧米で、里親、養子縁組制度が当たり前になってくる中で、妊娠中の胎児の発達障害が、人間の意識から「先祖」が消えることの危険性に、警告を発する。

保育制度も然り。一度、負の連鎖が始まり、それに市場原理が加わると、さらに「制度」で対応していくしかなくなってくる。一度設定した「量的」要求を満たすために、規制緩和が行われ、その過程で、「育てる人材」が質的にも、量的にも確保できなくなってくる。

「親らしさ」が失われると、子育てを「制度」で代替するしかなくなってくる。それが人類全体に起こっている未体験の「危機」。

母子分離政策で、少子化を進めるのが、「子どもの権利条約」違反であるように、子どもたちの「生きる力」を、政府が義務教育や保育制度で奪ってはいけないのです。最近の教師不足や、小学校の教室及び職員室における混沌を見ていると、「会話」が噛み合っていない。乳幼児期に、一対一で理解しようとしてくれる人がいない時間が長く続くと、言葉を超えた、「気持ち」でコミュニケーションすることが苦手になる。そういう人たちが、すでに、教師や保育者になって、愛着障害と思われる子どもたちとぶつかっている構図が見えてくる。

欧米に比べてはるかに状況がいいのに、日本では、政府に促され、幼児期の自分の子と日に11時間、年に260日離れる道を選ぶ親が半数近くになり、仕組みが限界に来ている。「子育て」に対する意識の変化は、人類にとって最大の危機になることに気づいてほしい。

制度で「血縁」を壊しておいての「インクルーシブ」は、偽物、見せかけの「言い逃れ」「誤魔化し」でしかない。日本のように、まだ家庭に実の父親がこれだけいる「血縁に準ずるインクルーシブ」が本来の姿だと思う。