「三歳児神話、大切にしなきゃ」#2

X(旧ツイッター)に、先日出演した番組に対して、こんなメッセージをいただきました。有難うございます。三十五年間、ずっと孤軍奮闘みたいになっている私には、嬉しい声がけです。

「アベプラの3歳児神話のお話し見させて頂きました。

保育士を代表し、政府の保育政策をしっかりと批判してくださり、本当にありがとうございます。

保育の専門家、有識者、大学の教授などは全く批判してくれない中、松居さんが言って頂いた事はとても意義のある尊い事です。御礼申し上げます」

母子分離の正当化を目指す学者やマスコミが、いまだに、三歳児神話は神話に過ぎない、などと言う。番組のタイトルは、それに加えて、「0歳児を預ける親は子育て失格か」となっていました。

失格か、合格か、など、誰にも決められない。神様だってそんなことはしない。なぜ、マスコミは対立を煽るのか。それが問題、と私は冒頭に発言しました。

人間は「神話」の世界で会話をする、宮崎アニメなどはまさにそのいい例、しかも、それを人類が求めているから、世界中で支持される、とも言いました。(ドラゴンボールも、心が清くなければ雲に乗れない。鳥山さん、ご冥福をお祈りいたします。)

そういう「神話を再創造していく」出発点に、0、1、2歳児との会話がある。

何か、罠にはめられた感じもしたのですが、次の日、この御礼メッセージが届いて、ホッとしました。出演して良かった、と思いました。

体験に基づかない知識を詰め込んだ「専門家たち」が、「ママがいい!」という、神話への導きの対極にいる。

「人間性」と、対峙している。

番組がYouTubeに載せられた時、タイトルが「三歳児神話、大切にしなきゃ」になっていたそうです。これは、嬉しかった。

以前も触れましたが、去年、こんな記事がありました。マスコミがこぞって報道した「国際調査」です。

「男女平等、日本125位=順位落とす、先進国最下位―国際調査」~政治や経済の分野で遅れが目立ち、先進国では最下位だった~。https://sp.m.jiji.com/article/show/2966296?free=1 という。

政治や経済の分野に参加する女性が少ないことを、「遅れ」とし、疑問を抱かせないように報道する。順位を落としている事実から、日本の女性たちの意志、選択の自由を読み取ろうとはしない。

マスコミは、「性的役割分担」を無くしていくことが「男女共同参画社会」なのだとした、人類が哺乳類であることを否定するような政府の閣議決定を鵜呑みにし、「子育て」を、経済優先でしか考えることができない政府の言いなりになっている。新聞が読めない、0、1、2歳児の「願い」が視界に入っていない。ほとんど想像しない。

この手の報道を目にする度に、マスコミや経済学者は、意図的に、「女性らしさ」という個性を、経済競争の活性化・「一億総活躍」のために見下し、失わせようとしているように思えてなりません。(その反動が、男性の生涯未婚率が3割に近づいていることと、少子化に拍車がかかる、という現象に現れる。)

本当に、それでいいのか、という素朴な疑問が、「125位:順位を落とす」という現象に現れている。私には、そう見える。

日本の女性たちは、政府が主導する無謀とも思える保育の量的拡大、質の低下から、その真意に気づき始めている。「ママがいい!」という言葉を覆い隠すための規制緩和を容認、追認してきた学者や専門家たちの不誠実さを見抜き、彼らの「意図」に不信感を持ち始めているのではないか。

馬鹿げた、子ども未来戦略が言うのです。

「こども・子育て政策を推進するに当たっては、今も根強い固定的な性別役割分担意識から脱却し、社会全体の意識の変革や働き方改革を正面に据え た総合的な対策をあらゆる政策手段を用いて実施していく必要がある。 」

こういう「罠」に、母親たちが、気づいているのではないか。

そうであってほしい。

「働き方改革」の前に、「母子分離」政策がずっとあった。保育士不足が極まって、規制緩和ではいよいよどうにもならなくなってきて、やっと始まった「働き方改革」なのです。いまの学校の状況を考えれば、遅すぎる!!

(国際調査の順位を上げるために)起業したり、政治家を目指したりすることよりも、幼児と一緒に歩いたり、子どもの人生を考えて「オロオロ」したりすることのほうがいい。充実した時間を実感できると思う、彼女たちの、「女性らしい」主張と意思が、この125位、しかも前年から9位落としているという現象に現れているのだと思いたい。

(しかも、男女平等が先進国最下位の国が、GDP三位の、経済的に非常に成功している国なのです。それを、偽善的な学者たちは指摘しない。そもそも、「根強い固定的な性別役割分担意識」があったことが、日本の成功の秘訣だったのではないか。女性の平均寿命は世界一、犯罪率も欧米に比べて「奇跡的」に低いのだし、と考えるのが本筋だと思う。アインシュタインは、その調和を羨ましがり、ストロースやトラッカーも、その優位性に気づいて、憧れている。)

「0、1、2歳児と見つめ合わない人生なんて、彼らに、自分をさらけ出さない人生なんて」

そんなものは、やはり虚しい。

赤ん坊が泣き出して、「泣き止んでほしい」と思った瞬間に、人間は、自分自身を体験する。

本当の自分が見えてくる、喜びが、そこにはある。

神から見られている自分がいて、それを、彼らは、ちゃんと、受け止めてくれる。

立ち止まる、としたら、今しかない。

(養護施設に勤める友人の言葉です。)

「保育士のたまごが、養護施設にも実習にきます。保育士を目指す学生が、ボランティアにきます。そこで、とんでもない保育士に出会うと、二度と現場へは戻ってこない」

(その友人から、新年の挨拶が届きました。)

新年明けましておめでとうございます。

『ママがいい』求められているんですね。

子どもたちが、ママがいいと思えることが、どんなに愛おしく、愛すべき時間であるかを忘れずにいられたら、もっと平和になるのにと思わずにいられません。

年末年始は、親子が再会のチャンスでもあります。

自宅にお泊まりに行く子は、不安と期待に胸を踊らせます。『やっぱり、無理です』といって施設に戻す親もいます。

本当のママではないけど、愛された記憶が、その子の生きる力になりますように…。

そう願いながら、今年も歩み続けてみます。

 

(ここから私です。)

「福祉」という仕組みの怖いところは、同僚の中に一人よくない人がいると、周りの人の人生も崩れていくこと。自分を必要としてくれている人たちがいるのに、逃げないと、精神的に壊れてしまう。そういうことに敏感な人、福祉に一番大切な人が、身を守るために去っていく。

よくない人、を排除できないほど、政府がつくった「人材不足」は進んでしまった。「ママがいい!」という大地の不満を抱えている保育界には、倍率が出ないことが致命的なのです。そうした中、いま求められているのは、専門性より人間性です。途切れそうになっている、勇気と、根性、なのです。

その現実はすでに、小学生たちを呑み込もうとしている。自己の幼児期の愛着関係の不足から、心の時限爆弾を抱えた、人間性に欠けた、良くない教師が増えている。それを見て、感性豊かな教師の心が折れ、辞めていく。負の連鎖が一気に拡大し始めている。

:発達障害の子“通級利用に数か月かかる場合も”都内の4割以上 自治体アンケートからみえた“学びの壁”

https://www.nhk.or.jp/shutoken/wr/20240126b.html

繊細な子どもたちの「育ち」は、数ヶ月も待ってはくれない。なぜ、通級利用が必要な子どもがこれほど増えているか。就学前の愛着関係が足りていないのです。「発達障害の可能性がある子どもは、年々増加傾向で」と報道するなら、政府の「母子分離」政策にいますぐに、ブレーキを掛けなければいけないのです。

「ママがいい!」に、十一時間保育が壊したもの、という章題で、NHKの「クローズアップ現代」で放送された、『少年犯罪・加害者の心に何が~「愛着障害」と子どもたち~』を挙げて、仕組みが、どういう道筋で破綻していったか書きました。

幼児期に、「子ども未来戦略」で母子分離を進め、義務教育を、教師不足という形で共倒れに追い込んでいる「こども家庭庁」の「子ども真ん中」というテーマが、いかに偽善的か、「戦略」の中で、ネグレクトの勧めとも言える(慣らし保育なしの)「子どものショートステイ」を、「圧倒的に整備が遅れている」と言い切るのを読めば、わかります。この「戦略」は、子どもたちを「戦力」にしようとしている。

しかし、これだけ規制緩和が進むと、「専門性」など、もう「福祉や教育の分野」では通用しない。それがわかっていながら、専門家であり続けようとする、学者の人間性が問われるべきです。専門性などという言葉で、「ママがいい!」という声を、いつまで無視するんだ、なぜ「人間性」を社会から奪い続けるんだ、と言いたい。

「ママがいい!」という言葉の持つ「価値観」が、人間社会の原点にあったことを思い出す時です。

兵士が、「ママがいい!」と叫んだ時に、平和への道筋が現れる。しかし、それでは、すでに遅すぎる。

そのことを考えてほしい。

 

「ママがいい!」、出版され、2年経ったのに、Amazonの売れ筋ランキング、社会福祉部門で一位です。もう、7刷になります。伸びている。幼児たちの叫びが、道筋を照らすことに、みな、気づき始めている。そんな気がするのです。YouTubeの松居和チャンネルでも、いろいろなテーマで話しています。よろしくお願いいたします。

 

ユーチューブで「松居和チャンネル」始まりました。ぜひ、ご視聴の上、出来ましたらチャンネル登録、高評価、拡散など、お願いいたします。https://www.youtube.com/watch?v=56cLD5Fh-Gg

第2回「日本人の子育ては魔法だった」〜そして、なぜいま【ママがいい!】なのか〜 https://youtu.be/l3Jo8ex6RfM  

第3回「人類にとって餌付けとは:チンパンジーのカニバリズム」https://youtu.be/Um8Swqv0haY

第4回【園長先生の悩み】経済優先の国の姿勢で、保育が追い込まれていく https://youtu.be/jVPBn7zZy5w

第5回:【幼児が人間性を育てる】これからの幼稚園、保育園の役割

https://youtu.be/TVGS4dYF06Y

第6回: 幼児を眺め、古(いにしえ)のルールを思い出し、神話を再創造する。

https://youtu.be/BRhOu4Sx-CA

第7回 「利権争いと分断」〜0歳児を眺めることの「平等」性について〜 https://www.youtube.com/watch?v=qq2axI9i24Y&t=246s

(毎週、火曜日の深夜に新たなエピソードを加えます。)