親が子に愛され、その確かさに感謝する

学校に通う子供たちにも保育者体験が良い。「頼り切って、信じ切って、幸せそう」な人たちに混じることで、「自立」や「自己実現」などという競争社会に引き込む「罠」のような言葉には騙されなくなる。一番幸せそうな人たちが自立していない。信じ、頼らなければ生きていけない。そこに人類を持続可能にする美しい仕掛けがある。

人生の質は、どれほど弱者に愛されたか気づくことで決まる。親が子に愛され、その確かさに感謝する。子どもたちは「信じること」が生きる力だと遺伝子のレベルで見極める。生きる力は、自立することではない。信頼の連鎖に身を置くこと。

いまの学校教育は、若者たちに生きるために必要な「哲学」を伝えきれていない。

長野で、保育体験に行く中学二年生に「幼児たちがあなたたちを育てくれます」と授業で説明し一緒について行った。生徒が男女2人ずつ4人一組になり4歳児を2人ずつ受け持つ。世話をする人が幼児の倍の数、この組み合わせがよい。両親と子供のような関係になる。絵本を読んだり、ぴょんぴょんカエルをつくったりして一時間過ごす。

見ていると、男子はいきいきと子供に還り、女子は母の顔、姉の顔になって輝く。保育士にしたら最高の、幼児に好かれる人になる。中学生たちが自分が「いい人」になっていることに気づく。男女が互いに根っこのところでは「いい人」だと感じる。そして本当の男女共同参画社会が生まれる。政府が進めているのは男女共同参画「競争」社会で、しかもそのために幼児を犠牲にしているのだから、真の「社会」とは言えない。

帰り際、幼児たちから「行かないでー!」と声が上がる。中学生たちが泣きそうになる。駆け引きをしない人たちからの人気は本物の人気で、大自然からのお墨付き。生きているだけで喜ばれるという実感が中学生たちの「生きる力」になる。

 

インドで出会った聖母

「ママがいい!」https://good-books.co.jp/books/2590/