新しい経済政策パッケージ」と「高等教育」について。#2 理想の(?)子供数を持たない理由

ーーーーーーーーー(前回からの続き)ーーーーーーーー

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今回の政府の「新しい経済政策パッケージ」の中に、

「少子高齢化という最大の壁に立ち向うため、生産性革命と人づくり革命を車の両輪として、2020 年に向けて取り組んでいく 」(中略)、

  「20 代や 30 代の若い世代が理想の子供数を持たない理由は、「子育てや教育にお金がかかりすぎるから」が最大の理由であり、教育費への支援を求める声が 多い」

という文章があります。

少子高齢化という「最大の壁?」の実態が見えていない。真剣に見ようとしていないのではないかとさえ思います。過去15年間やってきた「少子化対策」(エンゼルプランや預かり保育など)の結果ますます子どもは減ってきている。それが現実です。なぜそれを認めないのかと不思議でなりません。負担を軽くすれば子どもをたくさん産む、という幸福論がこの国では成立しない。それは明らかです。モラルや秩序を保つためには大切な、素晴らしいことでしょう。

経済財政諮問会議の、人間社会の心の動きと仕組みを知らない損得勘定本位のビジョン・視点がいまだにこの「新しい経済政策パッケージ」にはある。家族は、お金でまとまってきたのではない。「子育て」で心を一つにしてきたのです。

(「子どもを全員保育園で預かって、母親が全員働けば、それによる税収の方が保育園にかかる費用より大きい」という馬鹿げた計算が経済企画庁の諮問会議から発表されて15年以上になります。http://kazu-matsui.jp/diary2/?p=78 その時も、「だからどうなんだ」と誰も言わなかった。当時、ジェンダー学者や経済学者から目の敵にされた女性の就業率のM字型カーブが、実は乳幼児の願いをかなえようとするこの国の美学ではないのか、と誰も強く言えなかった。自分で育てられないのなら産まない、という意識も含め、この国特有の、子ども優先の常識や考え方が、欧米思考の経済学者たちの「子育て観」とずれていることを誰も指摘しなかった。)

子育てという「負担」は人間社会の基盤を育てる大切な負担で、そこで得られる幸福感の伝承が人類をここまで進化させてきた。先進国社会(豊かな国)に共通する少子化の原因は選択肢が増えることで起こる、人生を支えてくれる幸福論の喪失にある。アメリカと中国という最も真似したくない二つの国を除けば、GDPが世界一位という豊かな国日本で、3割の男が一生に一度も結婚しない。「子育て」という人類の進化に必須の幸福感が人生の目標となり難くなっているからです。

政府の言う、理想の(?)子供数を持たない理由は、「子育て」の幸福感を体験的にも、情報としても、しっかり知らされなくなってきているからでしょう。そんなやり方でネズミ講のねずみを増やそうとしても、日本の文化がそれに抵抗する。

政府が「子育て」を、女性を輝かせない「負担」と位置付け喧伝すれば、家庭を持ちたいという男たちが減って当たり前です。彼らの意欲、存在する動機が希薄になってゆくからです。

同時に叫ばれる「一億総活躍」という掛け声が、あまりにも薄っぺらで、この国の思考や議論を、現実を離れた色あせたものにしている。

(内閣府の調査で若者の引きこもりが54万人。3割超が7年以上で、長期化、高齢化しているという。注目すべきは「引きこもりの状態になった年齢」。20~24歳が増えトップで34.7%。次が16~19歳の30.6%。結婚して家族を持とうと思い始める時期に、引きこもりが始まっている。パワーゲームにおける平等論が学校教育を支配し、男女共同参画社会の土台が「性的役割分担」だという文化人類学的に考えればごく当たり前のことが「高等教育」の中で言えなくなって、少子化は進んだのです。)

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「新しい経済政策パッケージ」http://www5.cao.go.jp/keizai1/package/20171208_package.pdf