講演のあとで

 先日、私立の保育園で講演しました。講演が終わって、一人の母親から相談を受けました。子どもが言うことをきかない、と泣いています。聴くと、園ではいい子で大丈夫。家で、お母さんと一緒になると我がままになる、まとわりついて離れない。父親は、子煩悩でいい親らしいのです。

 「あなたはいい母親だから、子どもが一緒にいたいんですね。仕事を辞めることは出来ないのですか?」とたずねると、看護士ですから辞めてもいつか復帰することはできます、生活に困っているわけではないです、と言います。
 遠慮していたのか、部屋から出ていた父親が問題の2歳の男の子を抱っこして近づいてきます。父親にしがみついているその子を見て確信しました。なぜ、母親が泣いていたのか。自分も気がつかない心の底で、母親も、息子と一緒にいたくて仕方なかったのです。
 「いい機会でしたね。2年くらいでいいですから、いつも一緒にいてあげて下さい。今日ここで私に質問したのが運命だと思って。この園を辞めても、子どもをおぶって園に手伝いに来てください。この子を知っている人たちと縁を切らないように。もうその人たちはこの子の大切な財産ですから」
 それを聴きながら、父親が少し笑顔になります。

 園長先生に、あとで「どんな質問でしたか?」ときかれ、その会話を伝えると、園長先生が本当に嬉しそうな顔をしました。

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