「親は常に一年目だった」

 

保育園で、子どもが初めて歩けるようになる。

園長が「親に言っちゃいけないよ。もうすぐですね、って言うんだよ」と担当に注意する。

「そういう特別な瞬間を親が見ていないことに慣れてしまったら、私たちの仕事が親子の不幸に手を貸すことになるんだよ」。

こんな園長に当たった親子は、知らないうちに人生が変わっている。

保育は仕事ではない。そう自分を戒め、境界線の上を綱渡りのように歩いていく保育士たちから私はいろいろ教わった。

慣れてはいけない。その子の「親」ではないのだから。そう言いながら、園長たちは「本当の保育士」を目指していた。子育ては、親の幸せ。

ある園長が、「一年目の保育士にかなう保育士はいない」と言った。

理屈でも、正論でもない。そんな言葉があたり前のように語られていた時代があった。それを伝えていくのは、聞いた者の責任だと思う。

親は常に一年目だった。不安に襲われる時がある。そこで「専門家に任せておけばいいんだ」という心理に動いたら、保育は絶対にそれを受けきれない。

子育てに不安を感じるのは子どもに関心があるから。

いい親だということ。

絆で不安を解消しようとすることが、温かく強い社会をつくってきたのだ。

( #ママがいいより )

ママがいい!~母子分離に拍車をかける保育政策のゆくえ~

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