保育課の熱血係長が四面楚歌に

「ママがいい!」の出版社のHPにインタビューの続きがアップされました。

『ママがいい!』著者 松居和さんに聞く④欧米の悲劇・日本の奇跡

本では書ききれなかった風景や、エピソードを語っています。加筆、修正もしていますが、インタビューだから言えたような部分もあります。ぜひ、読んでみてください。以下は、その一部です。

◆保育課の熱血係長が四面楚歌に

最近の保育施策を「ドロ舟」と言い切った女性の係長がいました。

──ドロ舟ですか。いつ沈むとも知れないほど危ういのが今の保育政策だと。

もう沈みかけている、と言うニュアンスですね。彼女は、虐待が疑われる家の前に車を止めて張り込むような烈女でした。

公立保育園の多い市で、いわゆる児相マター(児童相談所案件)が急増し、それにもう対応できないんです。限界を超えている。

すると、保育園が児相と仮児童養護施設みたいな役割を押し付けられる。でも、保育士不足による質の低下が同時に起こっているので、どうしようもない。そんな仕組みの中にいる自分が辛いし、腹が立つんですね。怒っているか、泣いているか、そんな人でした。

本人もシングルマザーで苦労してきた人でしたが、長時間預けることに躊躇しない親たちが、家庭崩壊、虐待へと進んでいく道筋が見えてしまうんです。

そこは、外国人の親も多い市で、みんな綺麗事ばかり言うんですが、予算もないし人材不足で、子どもが守れず、彼女は四面楚歌になっていました。

子どものために動こうとすれば、誰かから白い目で見られる、役場の中でも、なに一人でいいカッコしているんだよ、という感じなんですね。

ーーーーーーー中略ーーーーーーーーー

当時から、野党も与党も少子化対策として「待機児童をなくします」と言っていた。保育園での0歳児1歳児からの長時間預かりを進めていたんですよ。「子ども・子育て新システム」が、三党合意で「子ども・子育て支援新制度」と名前を変えて受け継がれていった。

その結果、ますます少子化は加速したんです。

これだけ子育ては損な役割り、みたいな宣伝をしたら、そうなりますよ。

にも関わらず、少子化によって日本の経済が悪くなっていくことこそが国家的な危機なのだ、と今になって言うんです。政府が加速させた少子化は、もう止まりませんよ。いくら対応策を考えても、最近の度重なる規制緩和を見ていると、政治家と学者がこの国の首を絞めているようなものです。

子どもが減ろうと、経済が悪くなろうと、まず乳幼児の願いを想像する、という原点に立ち戻るしかないんです。

待機児童の主体は0、1、2歳です。
その子たちは、保育園に入りたいなぁ、入りたいなぁ、と順番を待ってはいないんです。「ママがいい!」と叫ぶんです。

私はそういう議員に、4月、国じゅうで起こっている慣らし保育のときの叫び声「ママがいい!」を聞け、と言いたかった。

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(インタビュー時の動画の一部です。)