ハーバード大の教授/三つ子の魂百まで

 長田先生のまんさくブログhttp://osadayasuji.com/?p=385 は凄い。ぜひ多くの人に読んでいただきたい。園長や私がくり返し政治家や行政、親たちに訴えてきたことが、ハーバード大の教授によって「ハーバード・ビジネススクールを巣立つ君たちへ」と卒業生に語られる。これなら日本の政治家も学者も少しは耳を傾けるかもしれない。

『「ハーバード・ビジネススクールを巣立つ君たちへ」(How will you measure
your life.?
)と副題し、豊かな人生を送るために、ハーバード・ビジネススクールを卒業する若者へ贈る言葉としてまとめられたものです。』

その中に、『子どもたちが学校にあがってからの追跡調査でも、子どもたちが生後30ヶ月間に聞いた言葉の数と、成長してからの語彙と読解力の試験の成績とは、とても強い相関(0.78)があったとのこと』

 ここでハーバード大の教授が卒業生に、幸せを願って語りかける言葉を「子育ては専門家に任せておけばいいのよ」と言った元厚労大臣、それを支持した前総理大臣、「乳児は寝たきり」と言った元経済財政諮問会議の座長にぜひ読んでもらいたい。経済の仕組みは人間の生の営みの一部、そこに、幸福感や、育てあい育ちあいがないと経済の存在意義さえわからなくなる。アメリカという、市場原理や資本主義経済を代表する国の代表的大学の教授が、これから経済界でリーダーシップをとって働く可能性が大きいひとたちにこれを言う。それがメッセージとして日本に伝わった時、そこに人類の育てあいのようなものを感じる。

 ハーバード大の教授がHBSの卒業生に言うのを待つまでもなく、5才までの子どもの成長に時間をかけて関わることは、人生や人類の進化、人間性と呼ばれるものに影響する人類必修の体験でした。幼児という毎年これほど違う能力と資質を持った人たちと接して得るコミュニケーション能力は人智を越えています。祈りと想像力、思いやり、過去現在未来のつながりを実感する、そうしたこと全てがコミュニケーションの一部であり全体としての人類をかたちづくる。幼稚園や保育園が出来る前、数万年にわたって人類は5才までの子どもから生きる目的と意欲、そして幸福とは何か、どのように手に入れるかを学んできた。この教えを「成功したいなら守れ」というハーバード・ビジネス・スクールの教授の言葉は経済学の真理に近づいています。経済学は根源で幸福論と重なるべきなのです。

 5才までの子どもと過ごす時間は、闘いの気から人間を母性の気に戻す時間かもしれません。この時間が子どもにも親にも、社会にも大切なのだろうと思います。戦闘モードで人間は真の創造者になりえない。

 5才までの自分の子どもと過ごす、この「自分の」というところが社会の絆を育てる。子どもによって人間は利他で繋がる。ハーバード大の教授が卒業生に言う「子どもが幼い頃しっかり働いて、成長してから子育てに関わればいいと思っているかもしれないが、その時にはゲームは終わっている」という言葉と、子どもが学校に入ったから仕事を辞める、と言う母親たちの言葉の差異は、常識が崩れることによって起きているのでしょう。生態学的に人類をその都度守ってきた常識は、時にわらべうたや子守唄で伝承されます。阿部ヤエさんの本を読むとわかりますが、言葉掛けや知恵の伝承が音楽を伴ってされてきた。ここが人間の凄いところだと思います。

 子守唄を歌う経験が少なくなっています。現在2割が一度も結婚しない男たちは特にそう。義務教育の中で乳児相手にこのあたりの体験をさせると現代社会の欠陥を補完するにはいいはず。

 徒然草的に言えば、米国では今ではハーバード大まで言かないと教えてもらえないような大切なことを日本人は常識として知っていた。だから世界第三位の経済大国なのだと思う。それをハーバードまで行かなかった日本の学者たちが「欧米では」と言って崩そうとする傾向がある。真理は簡単で身近な幼児の中に見えるのに。モラル・秩序のない市場原理は喧嘩で適者存続のように見えますが、次世代を思い、子どもを育てようとすれば、必ず自分の身に負の連鎖は降り掛かってきます。喧嘩に勝ったとして果たして幸せになれるのか、ということだと思います。市場原理、規制緩和が日本でも言われていますが、DVや児童虐待の増え方を児相や児童養護施設で見ていると、あまりにもタイミングが悪過ぎる。

 何か根本的なところをまず建て直してからでないと、危ない気がします。

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