インドへシスター・チャンドラを訪ねて(その1)

インドへシスター・チャンドラを訪ねて(その1)

 

 ぎりぎりまで行けるかわからなかった、でも行ってよかった不思議な旅でした。ビザの発給が一日遅れたら中止だった。自分で、さっさと決断していれば何の問題もなかったのですが、決断が遅くなったな、と実感します。

 シスターに会いに行くには往復旅行日が三日半かかります。日程を十日とって、一緒に居れるのは一週間。飛行機を乗り継いで空港での待ち時間、チェンナイでホテルを探して……、と考えると躊躇してしまいます。以前は二日でとれたのに、四日から十二日かかると言われたビザが四日で降りた時、行こうと決め航空券を探しました。(ある不思議な人物から、シスターとは年に一度くらいは会っておいたほうがいい、と言われたことも気になっていました。)デリー経由の切符がみつかりました。

 シスターがその間グジャラートに行くと聴いていたので、帰りはデリー経由でもいいかもしれない、と思ったのです。そうすれば帰りにデリーで一泊してもう何年も会っていない画家のラマチャンドランにも会えるかもしれない。

 成田〜バンコク〜デリー〜チェンナイ〜マドライ。途中デリーで一泊し、新しくなった田舎のマドライ空港で炎天下、シスターとシスター・フェルシーが向こうから歩いてくるのを見たときは、暑さの中で、頬が両手で挟まれたように、ホッとしました。

 二年ぶりです。前回来ていた時に東北大地震がありました。(二年前のブログに書きました。)

 シャクティの踊り手たちは、順番に結婚してすっかり交替し、知っているのはカビタだけになっていました。それでも村の娘たちは同じように温かく、素直で、輝く瞳で見つめてくれます。シャクティに来ている娘たちは、様々な理由で学校をドロップアウトした子たちです。それでも勉強を続けたいという子たちは、村でも選ばれた子たちなのかもしれません。その子たちが、踊ることで、村では出来ない体験をし、体の芯のところに自信を植え付けられるのです。

(今回の旅の動画を始まりからユーチューブに載せました。編集がされていない、インドでアップしただけの映像ですが臨場感はあると思います。http://www.youtube.com/user/LucyKM2011?feature=watch。)

 

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 シャクティのグジャラートへの旅は三日後に迫っていました。私はてっきり飛行機で飛ぶのかと思っていたら、ディンディガルからチェンナイまでバスで7時間、そのあと列車で33時間non/ACというのです。インド縦断の長旅、興味はありましたが、さすがに体力的に無理かもしれないと思いました。私だけエアコンつきのACコーチに乗ったとしても、道中迷惑をかけることになったら困る。シスターも、アーメダバードの主催者に連絡をしておきますから、あなたは飛行機で行きなさい、と言ってくれました。

 グジャラートではスピーチをしますか?とシスターに聴いたら、言葉が通じませんよ。時々忘れますが、インドは大雑把に分けても十幾つの言語が使われ互いに通じません。宗教と伝統のタガが外れた時にどうなるのか、そこに人類の道筋が現れるのだろうと思います。

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 実は、そのタガが外れ始めたインドを感じた旅でした。日本の問題がマイルドに思える。

 貧しい人たちがますます貧しくなっています、犯罪も増えました、とシスターが教えてくれました。ディンディガルでは、一時間ごとに一時間の停電がもう一年も続いていました。ホテルや金持ちは発電機に切り替える仕組みを備え、中流は、バッテリーに切り替え、いくつかの明かりを確保していました。しかし、貧しい人たちは一時間おきにロウソクやカンテラの灯で暮らしていました。つい最近までそうしていたので苦にはならないのでしょう。

 貧しさと犯罪が増える中、大都市の目抜き通りを除いて、ゴミの増え方に驚きました。一番始めにインドに行った38年前、お茶は素焼きの土器で飲み、外へポイと捨てればカシャンと割れて、ゴミは土に還った。村の家々には伝統的にトイレも無かった。伝統的な自然との共存が崩れ、ゴミはゴミ箱へという習慣が教えられる前に土に還らないプラスチック容器やビニール袋が市場原理とテクノロジーで浸透し、インドはまるでゴミ捨て場のようになりつつあるのです。テクノロジーは使いこなす教育や生活習慣の転換を伴わないと人間社会から急速に美しさを奪う。先進国における教育の普及と家庭崩壊の関係に似ています。それが、インドでは強烈で、先進国の速度に追いつけない人々が、世代交代で美しさという拠り所をなくしてゆくのです。

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 チェンナイまで、夜7時間のバス行軍は思ったより負担でした。昔、カルカッタでドゥルガプジャという祭りに噛まれて寝込んだ感じ。頭も体もフラフラになりました。シスターと踊り手たちはそのまま33時間の列車の旅に出て、私は次の日に飛ぶことにしました。TV局のプロデューサーをしている友人のソウバさんが、じゃあ夕方のニュースに出ろと急遽準備し出演しました。(動画をユーチューブに載せました)

 シスターと踊り手たちはアーメダバードへ33時間の列車の中。気が咎めましたが、収録されたJayaTVのワールドニュースで、インドで頻発している暴行事件、貧富の格差、貧しさが絆を失って荒れていること、インドだけではない懸念を、シスターを意識しながら話しました。つづく。(放送もユーチューブにアップしました。)


写真はシャクティセンターで。上から夜景、シャクティバス、台所。

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