人形/ なぜ人間は人形をつくるのか

 (五月五日、被災地の空に鯉のぼりが泳ぐ。外国人にとっては不思議な光景だろう。以前、「なんで魚なんだ?」とアメリカ人に訪ねられたことがあった。日本人はかなり不可解なことをする。先進国の中では特にその不可解さが目立っている。渡辺京二著「逝きし世の面影」(平凡社)に、150年前この国を見た欧米人の驚きが集約されている。第十章、「子どもの楽園」は感動的。後々作られた儒教的、武士道的日本のイメージが吹っ飛ぶ。欧米人が「パラダイス」と書き残した国のひとたちは、大らかで、時空をわかちあうひとたちだった。まるで鯉のぼり。

 人類は不思議なことをする。社会における人間性の確認か、自分の人間性をそれぞれが思い出すためか。いずれにしても、鯉のぼりは抜群にいい。被災した人々と被災地に舞う鯉のぼりが、私に元気をくれるような気がする。ありがとうございます。)

 人形

 誰の家にも人形があります。30や40はあるはずです。

 平均いくつくらいあるか、ちょっとイメージで考えてみましたが、日本という国は特に一緒に暮らす人形の数が多い文化かもしれない、と思いました。おひな様が2セットあったら、それだけでけっこうな数になります。こけしや雉馬、鯉のぼり、ぬいぐるみや鉛筆や箸の先っぽについているものまで丁寧に数えていったら、一世帯平均100くらいになるかもしれません。これだけの数の人形が、全ての世帯にあるのだとしたら、私たち人類は、こういう物(者)をかなり必要としているということです。人形は私たちの「人間性」の一部だということです。

 なぜ宇宙は、私たち人間に人形を与えたのか?

 人形を見ながら考えると、ふと、なぜ宇宙が私たち人間に0歳児を与えたかが見えてきます。

 0歳児が私たちから引き出そうとしているもの、人形が私たちから引き出そうとしているものが、似ている。

 優しさだったり、祈る気持ちだったり、忍耐力、言葉を介さないコミュニケーション能力…。良い人間性を引き出そうとしているのだな、と思います。良い人間性とは、調和に向かう人間性でしょう。

 人間の面白いところ、不思議なところは、自分をいい人間にしてくれる者たちを自ら生み出し、つくり出すというところです。それが、0歳児であり人形です。


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